「FRAGILE 〜さよなら 月の廃墟〜」レビュー


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Wii専用ソフト「FRAGILE 〜さよなら 月の廃墟〜」
発売元:バンダイナムコゲームスナムコレーベル)
ジャンル:廃墟探索RPG
プレイ人数:1人
使用ブロック数:1(コピー可)
セーブデータ数:5
CEROレーティング:A
ヌンチャク専用
プログレ・ワイド対応


人類が滅びた世界で、生き残った少年セトは旅に出る。
“自分以外の誰か”に逢うために・・・


バテンカイトス」のトライクレッシェンド開発ということで、
発表時からかなり楽しみにしていたタイトル。
ゲームとしては、Wiiリモコンを懐中電灯に見立て 廃墟を探索するRPG となります。

グラフィックは高水準です。
同社のテイルズオブシリーズに近いアニメ的な絵作りで、柔らかく暖かみがあります。
特徴である廃墟の雰囲気も、非常に良いものが出ていると感じました。


そう、“雰囲気”。
本作の魅力を一言で語るならば、この言葉につきます。
寂しげで、どこか切ない思いにさせる廃墟。
メニューから取説まで、統一されたノスタルジックなデザイン。
個性的な登場人物の紡ぐストーリー。
繊細な効果音と、寄り添うように奏でられる音楽・・・。

これらの“雰囲気”にドップリとハマれるかどうかで、
「FRAGILE」という作品の評価は大きく分かれます。
というのも、“雰囲気”以外のシステム面などは 総じて並、あるいは下のクオリティだからです。

RPGと銘打たれてはいるものの、バトルシステムは単調そのもの。
雰囲気を優先したせいで、メニュー周りは快適とはいえません。
多くを語らないストーリー自体、好みが分かれるでしょう。
RPGとして見た場合、ボリュームもかなり少ないです。(最大レベルは35)
やりこみ要素も二週目もありません。(クリアセーブは無く、ED後はタイトルに戻るだけです)
サウンドテストやイベントビューアーの類が一切無いのは個人的にも残念です。



しかし
これの数多の不満点を「ご愛嬌」ですませられるほどの魅力があります。
乱暴な例になりますが、
例えばドラクエでは教会でしかセーブができません。
システムとしては不便ですが、それが「ドラクエらしさ」として定着していますよね。
FRAGILEはそれに近い、絶対的な魅力を秘めているタイトルであると思います。


僕はFRAGILEが大好きです。しかし、おすすめはできません。
スクショやPVを見て 運命的ななにか、あるいは一目惚れに似た感情を抱いた方ならば、
FRAGILEはきっと唯一無二の存在になるでしょう。
しかし「ちょっと面白そう」程度なら、やめておいたほうがいいです。
大多数のゲーマーにとって、ガッカリゲーか雰囲気ゲーにしかなりません。

素晴らしい魅力がありながら 決しておすすめできないタイトル、
それが「FRAGILE 〜さよなら 月の廃墟〜」です。