「オプーナ」発売五周年に寄せて

2007年11月1日。
二度目の年末商戦に突入し 絶好調のWiiに、ふたつの新作ソフトが発売されました。
ひとつは「スーパーマリオギャラクシー」。
新たなハードで進化した 最先端の3Dアクションゲーム。
あらゆる要素がハイクオリティ。名作中の名作でした。





そして、その超大作の陰にもうひとつ。
大仰な発表会を開催し 非現実的な販売目標をぶちまけたことで失笑を買い、
一部から妙な注目を集めていた 無名の完全新規タイトルがありました。

オプーナ」です。





華々しく陳列されたマリオギャラクシーの横に、ひっそりと一本だけ立てかけられていたこのソフトが
こんなにも私の心を動かし 魅了し続けることになるとは、
あの日 あの時の私は 想像もしていませんでした。


あの日から、五年。
今 当時とは違う端末から、当時は無かったSNSにアクセスすると、
そこにはたくさんの“トモダチ”がいて、日々 オプーナの話をしています。
五年という歳月は オンライン上のコミュニティを変容させるのに充分な長さですが、
オプーナという作品が、場所を変えながらも 五年の間語られ続けてきたことを 本当に嬉しく思います。






なぜ、オプーナはここまで特別な作品になったのでしょうか?
私が思うに、オプーナを特別たらしめているのは ゲーム全体に漂う その空気感特有の自由度でしょう。



Wiiの電源を入れて ヌンチャクを握れば、そこにはもう一つの世界 “ランドロール星”が広がっています。

そこは、息を呑むような大自然と 既視感のある科学文明が同居する世界です。
“ドーム”と呼ばれる各地のコロニーの中で 人々は息衝き、“トモダチ”と絆を育んでいます。
“ドーム”から一歩外に出れば、無機質なようでとてもユーモラスな“ダークローグ”が大地を闊歩する光景を目にすることでしょう。


そんな世界を、プレイヤーであるあなたは 少年“オプーナ”として冒険します。
冒険のゴールはひとつです。しかし、そこに至るまでの過程は あなた次第です。
「ライフスタイルRPG」と銘打たれた 本作特有のゲームシステムが、
本作の体験を それぞれのプレイヤーにとってオンリーワンなものにしてくれます。


―そんなゲーム、他にもよくあるじゃない。
そう思う方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、ゲームとは能動的なものですし、自由度の高さをウリにした作品は無数に存在します。
オプーナが特別なのは、突き放されない自由という ゲームデザインの妙なのです。

何をすればいいのかわからない、やることが多すぎて詰まってしまった…。
自由度が高いゲームは、不慣れなプレイヤーにとって ときに不親切なものになります。
かといって 一から十までレールをひけば そこにRPGの面白味は無いでしょう。


オプーナは、このどちらでもない ちょうどいい自由度を実現しています。

それぞれのプレイヤーが、共通の世界で 共通のゴールに向かって それぞれの道を歩みます。
それはまさに ライフ=人生 のような体験です。


温かみに溢れた、だけどどこかシニカルな世界での冒険は、きっと誰かに話したくなるような 魅力的なものになるでしょう。
そして その冒険に同じものはひとつとして無いのですから、誰かと話すたびに 新しい発見があります。
だから私達プレイヤーは、オプーナについて語らずにはいられなくなるのです。



オプーナは、地味な作品です。
お世辞にも綺麗とはいえないグラフィックに、キャラボイスが付いているわけでもなく、
プリレンダムービーなんて流れませんし、モーション操作もできません。

しかし、だからこそ 現代では忘れ去られてしまった RPGの本質醍醐味が凝縮されています。


いつまでも色褪せない プリミティブな魅力をもったRPGが、最新世代のハードで生まれたこと。
それもまた、オプーナが特別である理由のひとつです。


オプーナは、五年が過ぎた今となっては 過去の製品です。
それでも、作品としての魅力は 何十年経とうと過去のものとはならないでしょう。

これからずっと先の未来で、ゲームが 今日からは想像もつかないような進化をしていたとしても、
いつの時代に遊んでも オプーナは面白いと 私は確信しています。






次の五年後や、その十年後やその先も オプーナを語り続けていきたいです。
そして、同じようにオプーナを語れる“トモダチ”が 一人でも増えていってほしい。
それが、今の 私の願いです。





最後に、
オプーナを通じて出会うことができた 親愛なる方々に
そして オプーナを生み出してくださった アルテピアッツァ株式会社の皆様
および有限会社ベイシスケイプ等の関連会社の皆様、
オプーナを世に送り出してくださった 現 株式会社コーエーテクモゲームスをはじめとする スタッフの方々に
最大限の感謝の言葉を。



ありがとうございます。






それから、五歳の誕生日を迎えたオプーナに、お祝いの言葉を。


おめでとう、オプーナ